稍ゝおも

ややおもしろく、ややおもたく、jajaのJa,Ja,おもうこと

昨年末のブラジル映画

2019年の成果の一つに、12月になってからだけど、ずっと気になってた出町座と再開なった京都みなみ会館に初お目見得できたことがある。大阪にいるとリーブル(&シネマート)、七藝、ヌーヴォの御三家でつい済ましてしまいがちだけど、よくよく情報見ると京都でしかやらない企画とか多そうだし、今後もちょくちょく出向こうと思います。
年末の京都みなみ会館で見たのが、ネルソン・ペレイラ・ドス・サントスNelson Pereira dos Santos回顧集。ブラジルのシネマ・ノーヴォの嚆矢たる『リオ40度』Rio, 40 Graus(1955)と、いちばん最近のアントニオ・カルロス・ジョビンAntonio Carlos Jobimをめぐるドキュメンタリー『アントニオ・カルロス・ジョビン』A Música Segundo Tom Jobim (2012),『トム・ジョビンの光』A Luz do Tom (2013)だけは見たことあったんだけど、その間がすっぽり抜け落ちていた。
今回京都に来たのも全部行きたかっが、結局見たのは
『私が食べたフランス人』Como Era Gostoso o Meu Francês (1971)
『オグンのお守り』1975 O Amuleto de Ogum (1974)
『人生の道〜ミリオナリオとジョゼ・リコ』1981 Na Estrada da Vida (1980)
『監獄の記憶』1988 Memórias do Cárcere (1984)
の4本(アテネ・フランセで上映したときの製作年度とIMDbで検索したときの製作年度が違ってるので違ってるのは両方記載)でした。
この監督の映画、とにかく面白い!(娯楽作として)。いずれも(ドキュメンタリー映画であってさえ)物語性が豊かで、語り口がそれぞれに巧みで。
今回見たのでは、『私が食べたフランス人』は食人の慣習のあるブラジル原住民たちと侵略してきたフランス人、ポルトガル人、『オグンのお守り』は不死身という土着信仰をギミックにしたヤクザ映画(だからノワールにはならない)、『人生の道』はお馬鹿でええ加減なミュージシャン二人の楽しい楽しい旅映画、『監獄の記憶』は理不尽にも長年収監された作家の監獄生活物語・・と、切り口は全く異なりながら、その時代その場所のブラジル人というものをとてもリアルにかつファンタスティックに描き出している。
特に気に入ったのは、どう見ても身体つき顔つきがインディオには見えない今の(撮られた当時の)ブラジル人らが体に茶色いドーラン塗って現地人を演じたとおぼしい『私が食べたフランス人』かな。そのこと自体えらくなまめかしくて奇しくて当時の(そしてブラジルという国の出自をめぐる)民族・部族・個人同士の政治・駆け引きそして感情や性愛や食人にまで至るかかわりが、めちゃくちゃスリリリングでした。そういう怪しい出自がのちの前衛芸術にもかかわり、他の映画にも通奏低音として流れていたような気がします。