『汚れた手をした無実の人々』クロード・シャブロル
というわけで、金土日と東京に行ってたわけなんですが、主要目的はコレ。
新文芸坐シネマテーク クロード・シャブロル Claude Chabrol 特集。
『汚れた手をした無実の人々』Les innocents aux mains sales (1975)
Les Innocents aux mains sales — Wikipédia
大寺眞輔氏による字幕と解説付き。このシネマテークで6作品目のシャブロルになるという。同じ企画、関西に持って来れないのかなぁ・・東京では3週連続満員御礼だったというに・・。
冒頭、有閑層らしい女の寝そべった眩しい裸体のぷっくり美しいお尻に、舞い上がった赤い凧が落ちるというなんともサブリミナルな出逢い。
女がサングラスを外すとおお!ロミー・シュナイダー Romy Schneider ではないか!シャブロル映画にロミー?しかもなんとも惜しげなく裸をさらけ出して・・なおかつはっきり男の欲望を訊く台詞を吐くではないの!
かくしてフィルム・ノワールを意識した深い影、黒み、寝ころがったときに頭が下になる構図など表現主義的とも精神分析学的ともいえるかっこいい映像の積み重ねのなかに不穏な裏切りの物語が紡がれ、それをコミックレリーフな脇役たちが盛り上げ、二転三転のどんでん返しの三転目などもう客席から笑いが起こっちゃうぐらいミステリーというよりはファルス(笑劇)。女のファロスたるお尻が開いた物語は男のファロスの不能でこんぐらがった物語の縺れに絡みとられたかと思ったら、ヒロインはたった一人の女性として男のファロスたる法の網目に雁字搦めにされ、ラスト、その男の法にただ一人で抵抗するアンティゴネーのように闇に消えていくのである・・。このラストの真っ黒のドレスが美しくてね!衣装はイヴ・サンローランYves Saint-Laurent、その場面その場面のヒロインの状況・心理をもうエレガンスで見せる素晴らしさ!(特に、黒と白とグレーの使い方!)サンローランといえばカトリーヌ・ドヌーヴだけど、ジャンヌ・モローのシャネルといい、オートクチュールのセンスがしっかり映画の重要な部分を占めていた時代であったことも思い起こさせる。
フィルム・ノワールははっきり女嫌い(ミソジニーもしくはアンチフェミニズム)なジャンルなのだけど、シャブロルはその女嫌いを物語に明示し「男の法」を語ることでフェミニズムの立場に立つ。そういえば若き日のジョディ・フォスター Jodie Foster使ってボーヴォワール Simone de Beauvoirの『他人の血』Le sang des autres(1984)を撮ったのもシャブロルでした。