稍ゝおも

ややおもしろく、ややおもたく、jajaのJa,Ja,おもうこと

ずしんと来る映画3題

なぜか同じような傾向のを続けて見てしまうときがあり・・スケジュール組むときには意識してないんだけどね。
また、極力事前情報は仕入れないようにしているし・・。
でもこれって、よくよく考えれば思いっきりかぶっていたのでした。
『1917 命をかけた伝令』1917 (2019) Dir: Sam Mendes
『彼らは生きていた』They Shall Not Grow Old (2018) Dir: Peter Jackson

en.wikipedia.org

en.wikipedia.orgいずれも第一次世界大戦で英国(と英国連邦)の兵士らが体験した大陸でのひっどい塹壕戦。
それを片や、実際の記録映像や記録音声をきれいに修復して編集し「決して年老いることのない」彼らの姿をそこに浮かびあがらせる・・。ちょっとこれは・・といった恣意的なモンタージュもあったけど、そこは監督ピーター・ジャクソンの面目躍如たるところなんだろう。
片や、サム・メンデスは全編ワンカットという大胆な試みでみごとにドラマ化する。主要登場人物ら(イギリスの大物俳優らが脇を固めてるのがうれしいところ)の背後の戦場の動きなどがほんっとにみごとで、いったいどれくらい綿密に構想して構築してリハーサルを重ねたんだろうと思う。また、主人公を追って走る(というより一緒に走る)キャメラもみごとなんだけど、途中で何ヶ所か止まる、そのところの演出も凄い。ネズミと爆発のところとか、爆撃機が落ちて来るところとか、テクノロジーの勝利なんだろうか。
いずれも監督のおじいさん(or ひいおじいさん?)に捧げられていて、サム・メンデスのは、おじいさん(or ひいおじいさん?)が家族に語り伝えていた物語を映画化したものかな。こうしてまた、「決して年老いることのない」祖先の個人の経験が作品として創り出され、後世に残されていくことになるのだ。
で、これらの作物がみごとであればあるほど、この背後に隠された膨大な残されることのなかったひとびとの姿、語られることのなかった声々のことを思う。日本人が(加害者としても被害者としても)かかわった第二次大戦は、まだまだ語り尽くされていないんじゃないかと思う。塚本晋也『野火』(2014)のような傑作はあるけれどね。また、日本映画にも、中国映画などにも戦争を描いた劇映画は多いけど、また新たなテクノロジーと作り手の新たな視線のもとに、新たな表現が生まれて来て然るべきなんだろうな。
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この日はもひとつ。
『リダウト』Redoubt (2018) Dir: Matthew Barney

Matthew Barney - Wikipedia

 ↑ 作品そのもののページはないようなので・・上のページ内に作品説明あります。

これ、1週間だけの公開じゃあもったいないなぁ・・通常の映画の配給に乗らなかったんだろうか?たくさんの人に見て欲しいと思う。
処女神アルテミス(ディアナ)の入浴中の裸身を盗み見てしまったために鹿に変えられてしまったアクタイオーンの神話をモチーフに、マシュー・バーニー自身も出演し、アイダホの自然の中での人間や動物のありよう(生きよう)を見せ、そこで作品を制作するようすを見せる。作品ができあがっていく過程を追うドキュメンタリーであるとともに、この作品自体が中に幾層もの作品を織り込んだ一個の映像作品である。
前の2本と同じく、これもずしんと重量感のある映画だったけど、強いてもひとつ共通点を挙げれば「死体が容赦無く出てくる」ことか。(作り物か本物か、人間か人間以外の動物か、は問わず)。女神の体現するのは自然の酷薄さか、あるいは野生に生きる動物を撃つ人間の残酷さか、あるいはその闘争の過酷さか。ライフルを撃つ女神の(ことにその眼の)美しいこと!また自然を舞台にあらゆる身体表現を見せてくれるダンサーらの身体の素晴らしいこと!ドローン撮影などもうまく用いられていて、これもまた新しい撮影技術と藝術家の新たな視点とで、新しい表現が創り出された類であろうと思う。