稍ゝおも

ややおもしろく、ややおもたく、jajaのJa,Ja,おもうこと

怖くて美しい共同体

『ミッドサマー』Midsommar (2019) Dir: Ari Aster

en.wikipedia.orgえ、なんで? 流行ってんの?? わりと大きな劇場が満員でビックリでした。
わかりやすいんやな、と思い当たる。おんなじような「怖い共同体もの」映画いっぱいあるけど、そのなかで特に傑出したものでもないし、展開は予想通りだしシーンもイメージも既視感いっぱい。その村のイメージ、祭りのイメージも、特に目新しいものもないしね・・。
しかしこういうのって、北欧とか東欧とかカナダ以北のアメリカとか、ヨーロッパの辺境によく似合うのだねぇ・・。ケルトとかヴァイキングとか、キリスト教以前の祖型のヨーロッパへの憧れか?
ひとつだけ。ルキノ・ヴィスコンティ Luchino Viscontiの名作『ベニスに死す』Morte a Venezia (1971)でダーク・ボガード Dirk Bogarde 演じる主人公の死を招き寄せる美少年を演じていたビョルン・アンドレセン Björn Andrésen が、すっかり年老いて美老年になって出てきたのが・・。いや、どこかで、あの映画の後も故郷で普通に俳優やってるという話だけは聞いたことあったけど。
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『ダンサー そして私たちは踊った』 And Then We Danced (2019) Dir: Levan Akin

And Then We Danced - Wikipedia

ka.wikipedia.org監督はジョージアグルジア)にルーツを持つスウェーデン人でスウェーデン映画でもあるんだけど、ほぼジョージアグルジア)語の撮影。
もちろん主人公とそれを演じる現役ダンサーのレバン・ゲルバヒアニ Levan Gelbakhiani の魅力は言うに及ばず。ダンスの美しさもさることながら、自らの性的衝動にナイーヴで、しかもそれが訪れたときに戸惑いながらも実に素直にそれに身を任す、その表情が素晴らしかった。
主人公をめぐる人々、友達や同僚や家族の造形が良いし、その関係性もすごくしっかり描かれている。家族が住む貧しい集合住宅の、しかしその美しさといったら! 近所の「いらんこと言い」のおばちゃんもね(昔の文化住宅とか長屋あたりってこういうおばちゃんが必ずいたの)。もちろん「少し裕福」と言われるお家での家の中や庭やいろんな場所の美しさも、それを人々ごと追っかけるキャメラも。ジョージアグルジア)という場所の魅力に惚れなおしました。わりと最近もジョージア映画特集やらでジョージアのワインやら伝統の歌やら知ったばかりだけど、傍(はた)から見ればすっごく素敵に見えるけど、中にいる人々にとってはきっと愛着とその裏腹にある因習(たとえば根強いホモフォビアなど)のしがらみが大変なんだろうな。
ダンスって、考えてみるとどこの文化のどのダンスにも性愛を暗示させる動きが多いのだけど、その性的表徴が、やっぱり「女っぽ」かったり「男っぽ」かったりするのよね。ラストの主人公の踊りは、グルジアの伝統ダンスから始まってコンテンポラリーの自由な動きへと脱けていく過程かと思うのだけど、そのなかにあからさまに「女っぽ」い仕草が混じる。