稍ゝおも

ややおもしろく、ややおもたく、jajaのJa,Ja,おもうこと

ハイ・ライフHigh Life

(承前)そして「酩酊、夜」ではなく「トランス、夜」。
まーったく民族的な彩りや濁りのない、しかしニュアンスはある、モノクロームの(あるいは蒼系の)ぶあつい電子音の靄に満たされて、ある種のトランス状態にひとをいざなうのがクレール・ドゥニClaire Denisの映画世界といいますか・・。
いま公開されてる『ハイ・ライフ』High Life(2018)もまるきりそんな映画でした。

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High Life

パリ、18区、夜。 』J'ai pas sommeil (1994)もそんな映画でしたが、この監督、ホントに音楽と音響の使い方がうまいのね。無音の間もふくめて・・。
そんな音の層で満たされた神聖な閉域のなかに繰り広げられる美しく聖なる犯罪者たちの、血みどろで残酷でこのうえなく優しい暴力と性と生(愛は不在である。もしくはシミュラークルとしてしか存在しない)のサーガ・・といったところでしょうか。
長い黒髪が「力」を象徴する太母神役を、ジュリエット・ビノシュJuliette Binocheがよぉやったなぁと感心する。
「犬」のモチーフとか、随所にタルコフスキーАндрей Арсеньевич Тарковскийの『惑星ソラリス』Солярис (1972)とか『ストーカー』Сталкер (1979)を思わせるところはあるけれど、そういうレファレンスは特に必要ではないだろう。
SF映画は8割方B級ですが(いやB級だから悪いというわけではないけれど)たまにこういう高貴このうえない作品もあります。
え〜SF?と思って食指の動かない方も、ぜひご覧になってくださいね。
ジャンルのまったく異なる『パリ、18区、夜。 』との通底に唖然とする。偉大な作品というのではまったくないけど当時わたしが密かに偏愛する一本でした。
クレール・ドゥニ、もっと見たいなあ!