稍ゝおも

ややおもしろく、ややおもたく、jajaのJa,Ja,おもうこと

稠密な映画の時間が持続する

この画面の強度はどうだ・・稠密な映画時間がしっかりと持続する。ものすごく静かなあるいは単調なあるいは動きの少ない場面にあってさえ・・こういう極上の時を味わいたいがために、わたしは映画を見続けるのだと思う。
・・とおもわせる映画がたまにあって『田園の守り人たち』とはまさしくそんな映画でした。

moribito-movie.com

Les Gardiennes (film) — Wikipédia

フランス語タイトルでわかるけど農村の守り手はみな女性たち。その時代のその場所の暮らしをきちんと生きている人びとをノスタルジアでなくきちんとリアルに収めてある。グザヴィエ・ボーヴォワXavier Beauvoisの確かな演出力にカロリーヌ・シャンプティエCaroline Champetierの撮影の素晴らしさ!くっきりとした光のもとに捉えられる種蒔きの光景、黄金色に染まる収穫の情景、薪割りや炭焼きやあらゆる田舎暮らしの断片・・そして霧や煙の白さ・・。
それにしても、かつて憧れた美しい女優さんたちがみな軒並み美しい老女優さんと化しているのがなんとも・・。ナタリー・バイNathalie Baye、ごくごく若いときから中年の頃、そして今に至るまで大好き。娘のローラ・スメットLaura Smet、似てない母娘だと思ってたけど、切り返しショットでみると口元がそっくりなのね。どうやっても都会の女に見える二人(しかしナタリーは北ノルマンディーのメンヌヴィルMainnevilleという田舎の村生まれ)が、田舎には不似合いな粋さ上品さをたたえた特別な田舎女にしか見えない。対して赤毛と体つきが田舎っぽいイリス・ブリーIris Bry(実はパリ生まれ)の愛らしさ。終盤の変身は時代の移り変わりをも告げて。みんな農作業ふくめちゃんと仕事してましたねぇ・・。
家族を守るためと嘯き毅然とした表情で罪を犯すナタリー・バイの美しさ!そしてのちに犯した罪に怯える姿の美しさ!圧倒的でした。

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この日はもう一本『ワイルドライフ』。

映画『ワイルドライフ』公式サイト

en.wikipedia.org俳優としてのポール・ダノPaul Danoを初めて意識して見たのは『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』There Will Be Blood(2007)だったかその前だったか。なんて不思議な(狂気を秘めた)存在感をたたえた子だろうと思ったけど、その子が、その若い頃の自分とすこし面差しの通う少年を主人公にこんな素晴らしい映画を監督するようになるなんてね。

こちらもまたしっかりと映画的時間の流れる映画でした。少年が体験する両親の修羅場=ワイルドライフ。息子の前でどうしてもそんなふうに振る舞わずにはおられないキャリー・マリガンCarey Mulliganが身に沁みてね。