稍ゝおも

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デルフィーヌ・セイリグ Sois belle et tais-toi!

前回の記事で書いた"Jeanne Dielman, 23, quai du commerce, 1080 Bruxelles"でタイトルロールを演じたDelphine Seyrig デルフィーヌ・セイリグ。その映画のなかでは家事をおこなうその手つき、手さばき、仕草、いちいち本当に美しくて見惚れるほどだったんですが、実は大好きな女優さんです。イメージとしては主婦なんか(なんかというと失礼ですが)より『インディア・ソング』"India Song" Marguerite Duras マルグリット・デュラス(1975) の役のような、貴婦人の方が似合っているというか、でも普通の女性を演じていても、粋でかっこよくてクールなエロチシズムを漂わせ、ぜったいお馬鹿ではない筋の通った感じがいいですよね。年取ってからも皺の一本一本に至るまでずっとかっこよかった。

そのデルフィーヌが監督しているドキュメンタリー映画をMUBIの配信で見つけ、そのあっぱれな出来にまた感心してしまった。日本で上映されたことがあるのかな?日本語タイトルが見当たらないのだけど "Sois belle et tais-toi!" 英語タイトルがまんまなんで載せとくと"Be Pretty and Shut Up!"。実はまったく同じタイトルのフランス映画があってその邦題は『黙って抱いて』"Sois belle et tais-toi!" Marc Allégret (1958)  マルク・アレグレ監督でMylène Demongeot ミレーヌ・ドモンジョというコケティッシュな魅力の(日本でも大人気だった)女優さん主演のお色気犯罪コメディです。そのタイトルの批判的パクりね。

デルフィーヌ・セイリグが1975年にフランスとアメリカで24人の女優に行ったインタビューを編集したもの。米国側はJill Clayburgh, Jane Fonda, Viva, Millie Perkins, Ellen Burstyn, Shirley MacLaineら、フランス陣はAnne Wiazemsky, Marie Dubois, Juliet Berto, Maria Schneider(ベルトリッチの『ラストタンゴ・イン・パリ』に出たばかりの)などという豪華さ。'75年という年が微妙で、もちろんアメリカでは女性解放運動が行き渡った頃、フランスでは少し遅れてしかし確実に動きがあった頃。監督の聞き出し方も上手いんだろうけど、女優たちの口々に語る本音が胸のすく爽快さ! 男性(監督・観客)視線の女性像・女優像をかる〜く粉砕してくれちゃってます。加えて女優というお仕事のむずかしさ(あるいは面白さ)、女優として映画業界のなかで生き延びていくこと・・などなど。わたしも映画見るときに、特に映画の中の女優(あるいは女性の登場人物)を見るときに男性目線になってしまったりするのですが、あらゆる傑作に登場する素晴らしい女性像すべて含めて、やっぱり偏ってるよなぁ・・(演じる女性にとっては馬鹿げていたり非現実的だったり演じにくかったり阿呆らしかったりするよなぁ)と思います。溝口健二の映画で素晴らしい女性を演じ続けた田中絹代が、やっぱり自分で撮りたかったのもそれかな。女性監督がどんどん出てくるようになって状況かなり変わってきたけど、それでも日本の女性監督まだまだ少ないですよね。

インタビュイーのなかで特に印象に残ったのは、すべてフランス語でしゃべりまくるジェーン・フォンダJane Fonda(映画界の寵児であり被害者でありその後の活動含めてあらゆる意味で象徴的存在ですよね)、そしてわたしがお気に入りの、しかし若くして亡くなってしまったジュリエット・ベルトJuliet Berto(ヌーヴェル・ヴァーグの顔の一人)でした。